中野暗渠探検〜みえない川をみつけにいこう
第5回 地図から探検、中野区の暗渠
おうちでできる!? 中野区暗渠探検
日に日に短くなる陽と共に、静かに忍び寄る秋の気配。そのあとすぐやってくるのは木枯らしの季節だ。秋から冬、再び日が延びる春までの長い日々は、ついつい出不精になり暗渠探検も二の次三の次となってしまうかも……。そんな季節を前にして、当連載でせっかく目覚めたこの暗渠愛、これからいったいどう育めばいいの!? とお悩みの貴兄姉に。今回は家でもできる暗渠探検の方法をお伝えしたい。
いまやスマホやパソコンでいつでも手軽に地図が見られる時代。実は家に籠もっていても、暗渠を探し辿る暗渠探検はできるのである。
そんなバーチャル暗渠探検に役立つ地図の見方・読み方を、5つに絞ってご紹介していく。これら5つは全国あちこちで活用できるメソッドではあるが、今回は中野区で具体的に当てはめながら解説しよう。
① 流れで読む 〜道が描く「流れ」
まずはこの地図を見ていただきたい【図1】。

第3回( 第3回 妙正寺川上高田支流 )で紹介した「妙正寺川上高田支流」である。
道の「流れ」に着目すると、タテヨコ比較的まっすぐ、そして直角に街区を区切って道が流れているが、この妙正寺川上高田支流の暗渠道だけはそのゆるい秩序を乱す「乱気流」のような軌跡を描いている。もちろんこれは、そこに眠る川の軌跡、つまり暗渠であることのあらわれだ。
そしてこちら【図2】。

中野区を代表する開渠の一つ妙正寺川の川筋が、上の暗渠のように自由きままに流れているのがわかる。ここで注目いただきたいのは、何本かの道が切れ切れに、この妙正寺川に沿うように流れていることだ【図3】。

そう、これらはすべて暗渠。これら道路の流れはもともと水の流れを表しているのである。妙正寺川の両側には戦前までたくさんの田んぼがあり、そこに川から取水した水を回すための水路(あげ堀)が掘られていたその跡なのだ。
以上のように、道が描く特徴的な「流れ」は、かつての川の流れをトレースしていることも多い。
② 水で読む 〜水のあとさき
江古田の森公園はその北側に江古田川が流れ、この川が中野区と練馬区を分ける区境となっている。その江古田川、西端でぷっつりと途切れているのがわかるだろう【図4】。

なぜここで突然川が始まるのか。もちろんここで水が湧き川の源流となっている可能性も否定できないが、こんな場所はその続き(上流であればその先・下流であればその後)が、暗渠となってあるはずだ。
③ 道で読む 〜細道・はしご道
ではその上流をさらに地図で追ってみよう【図5】。

薄いブルーで着色したところが江古田川上流の暗渠部分である。地図上の表記では、上下に道が通っていて真ん中に断続的に島が続いており、まるで「はしご」のような形状。これを便宜上「はしご道」と名付けるが、このような道は暗渠であることが多い。真ん中が暗渠で、それを挟んで道が作られている状態だ【図6】。

また、極端に細く描かれた道も暗渠候補である【図7】【図8】。
それが「① 流れで読む」で述べたように特徴的な形状であればなおさらその確率は高くなる。もともと道ではない細流が、埋められて暗渠となったというのがこんな道の成り立ちである。


④ 家で読む 〜町割・家割
少々地図の解像度を上げ、パソコンなら拡大、スマホならピンチインして細部にも注目してみよう。例えばここは、中野区中央5丁目と杉並区高円寺南1丁目が隣り合う所だが、青いラインの部分は道もないのに家並みがきれいに揃ってカーブしているのがわかる【図9】。しかもそのカーブ上にはぽっかりとちょっとした空間が続いているではないか。そう、ここも暗渠だ【図10】。ここは中野区と杉並区の区境にもなっているが、このように行政区や町丁目などの境界として刻まれている川跡も多くある。


⑤ 文字で読む 〜名残地名
最後は字面を頼りにする方法だ。地図上に川や池がない場所に、水絡み・川絡みの文字(清水、泉、久保・窪、谷、橋などなど)は残っていないか。地名、字名、旧地名、交差点名などに着目してみよう。
中野区中央5丁目に橋場公園という名の公園がある【図11】。橋場とは周辺の旧地名で、地図には昭和6年から42年まで記されていたというが、地名自体はもっと以前からあったものだ【図12】。『なかのの地名とその伝承 (中野の文化財 ; no.5)』(中野文化センター郷土史料室編 中野区教育委員会 1981)によれば、江戸時代、将軍の来遊の際に架けられた特別な橋板がこの地に保管されていたのが由来とのこと。その橋が架かっていたのは他ならぬ、すぐそばにある今は暗渠の桃園川である。この他、中央4〜5丁目にかけて橋場という名は町会や保育園の名にも残っている。


地図で暗渠を探し当てたら、頃合いをみて次はぜひ現地へ。見えない川は、地図の中だけに眠っているわけではないのだから。
